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ベッドカバーを洗うなら今日だろう。
ここ最近にしては珍しい快晴を見上げて思い立ち、枕カバーも含めて2枚を洗濯機に放り込んだ。
目を覚ましたノラと暫く部屋で遊び、頃合いを見て再び洗濯機の元へと行く。
無事洗い終わったシーツ2枚を抱え、ベランダに出るべくリビングへと向かった。
(あ……)
そのリビングでは、那月がソファで本を読んでいた。
途端に居心地悪く表情を曇らせる俺を、何も言わずに見てくる。
けれどまた直ぐに、何事もなかったかのように本へと視線落とした。
「ぴゃー、ぴゃっ」
俺の足元を付いて回っていたノラが、おはようの挨拶と共に那月の元へとじゃれに行った。
それを皮切りに、俺は気まずさで立ち止まっていた足を動かして彼の傍を横切り、さっさとベランダへと出た。
那月との接し方を忘れて、思い出すことすらも出来ない。
分からないから、よそよそしく避けて逃げる。
那月はそれを言及しない。
関係はどんどん冷たくなっていく。
やり直す手段も見えないまま、修復の希望は薄れていく。
ひとつの空間にいることが、堪らなく苦しい。
閉ざした窓越しにちらりと振り返れば、那月は擦り寄ってくるノラの頭を撫でながら微笑んでいた。
ーー最後にあの表情を貰えたのはいつだっただろうか?
そう考えたとき、ひどい疲れが生じた。
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