新しい朝はこんなにも

243/295

857人が本棚に入れています
本棚に追加
/888ページ
ベッドカバーを洗うなら今日だろう。 ここ最近にしては珍しい快晴を見上げて思い立ち、枕カバーも含めて2枚を洗濯機に放り込んだ。 目を覚ましたノラと暫く部屋で遊び、頃合いを見て再び洗濯機の元へと行く。 無事洗い終わったシーツ2枚を抱え、ベランダに出るべくリビングへと向かった。 (あ……) そのリビングでは、那月がソファで本を読んでいた。 途端に居心地悪く表情を曇らせる俺を、何も言わずに見てくる。 けれどまた直ぐに、何事もなかったかのように本へと視線落とした。 「ぴゃー、ぴゃっ」 俺の足元を付いて回っていたノラが、おはようの挨拶と共に那月の元へとじゃれに行った。 それを皮切りに、俺は気まずさで立ち止まっていた足を動かして彼の傍を横切り、さっさとベランダへと出た。 那月との接し方を忘れて、思い出すことすらも出来ない。 分からないから、よそよそしく避けて逃げる。 那月はそれを言及しない。 関係はどんどん冷たくなっていく。 やり直す手段も見えないまま、修復の希望は薄れていく。 ひとつの空間にいることが、堪らなく苦しい。 閉ざした窓越しにちらりと振り返れば、那月は擦り寄ってくるノラの頭を撫でながら微笑んでいた。 ーー最後にあの表情を貰えたのはいつだっただろうか? そう考えたとき、ひどい疲れが生じた。
/888ページ

最初のコメントを投稿しよう!

857人が本棚に入れています
本棚に追加