新しい朝はこんなにも

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もう四月も近いというのに、未だ寒さは冬同然だ。 けれど分厚い雲もなく、ひたすら開放感に満ち溢れた青空は、やはり手を伸ばせば簡単に届きそうな気がした。 「……あ」 ベッドカバーを干し、次いで枕カバーを干そうとしたとき、突然強い突風に吹かれた。 その風圧に怯んだ俺の手から、枕カバーがするりと抜ける。 軽い質量は風に乗り、あろうことかベランダの向こうへと飛び立ってしまった。 ーー…いけない。 咄嗟に手すりを掴み、青空を舞うカバーの行方を追う。 思いっきり腕を伸ばした。 それでは届かないから、手すりに体重をかけた。 小さくなっていく枕カバーを追うように、身を乗り出した。 大丈夫、きっと届くだろう。 空ですら、手を伸ばせば届きそうなほど近いところにあるのだから。
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