新しい朝はこんなにも

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「何してるの」 ーー背後から、那月の声が聞こえた。 同時に俺は手すりから引き剥がされ、ベランダに足を着いた。 「……那月?」 ベランダの内側へと俺を無理やり連れていく那月を、きょとんとして見上げた。 「何をしてたの」 じっとこちらを見る那月はとても冷静な表情をしていて、訊ねる声色はどうしてか怒っているようだった。 「何してたって…、枕カバーが飛んで行ったから、取りに…」 「取りに? そこから?」 戸惑いながらも当然のことを主張する俺の言葉に被せるように、那月はさらに問う。 どうして責めるような態度なのか分からないまま俺はこくりと頷き、彼の言葉が指す”そこ”に視線を映した。 ーーマンションの7階から広がる空と街並みが、目の前に広がった。 「そこから取りに行くつもりだったの?」 「……」 全てを理解して背筋を凍らせる俺に、那月は再び冷静な表情で問いかける。 俺は声も出ないまま何度も、弱くかぶりを振った。 那月が引き留めてくれなかったらどうなっていたのか。 あのままベランダの手すりから身を乗り出して、それから…。 思考が働く今、那月の態度の意味を理解した今、自分自身の行動を振り返って戦慄した。
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