新しい朝はこんなにも

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「…………え?」 間抜けな声を零しながら、俺は何食わぬ顔で言う那月をぽかんとして見つめた。 「あ、見ない方がいいよ。視覚にキツイ見た目だから」 那月はしれっとした表情のまま、自身の右肩をとんとんと指先で叩きながら言葉を続ける。 ”そこにいる”、という意味なのだろう。 「…はっ、味を占めたか? 同じ冗談は通用しないぞ」 腕を組み、鼻先で嘲笑ってやる。 悪いが2回も驚いてやるほど甘くはない。 揶揄いたいなら手を変えるべきだったな。 「まぁ、兄さんが冗談だって思うならそれでもいいけど…」 「………」 ……けれど那月の微妙に曇らせた表情が、俺の強気な姿勢を崩してくる。 なんだよ、なんなんだよその哀れむような顔は。 「……い、いるのか? 本当に?」 みるみる不安が生じ、恐る恐ると訊ねる。 「ちょっとずつ背中の方に移動してるよ」 そんな俺に、那月はさらりとした言葉遣いで首を縦に振った。 「嘘……」 戦慄の余り、身体がまともに動かない。 芋虫が自分の背中を這っているなんて、想像もしたくない。 想像もしたくないことが現実に起こっているという事実に、卒倒しそうになった。 「な…、なんとかして…」 顔を引きつらせながら、震える唇で那月に懇願する。 「はいはい」 すると那月はしょうがなさそうに苦笑した。 そして近くに落ちている木の枝を拾い上げて来ると、俺を自身へと抱き寄せた。
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