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「……おや」
引き戸を開いて琉球畳の部屋へと入った俺に、座卓に向かっていた一色纏は振り向いた。
暗めの照明の下、読んでいたらしい本を閉じてから立ち上がる。
「なんとまぁ艶やかな髪ですね。濡れ烏そのものです」
感心したような声を零して、一色纏は乾いていない俺の髪を梳くように指を潜らせた。
「……。それに」
加えて、大人しくされるがままに立っている俺の全身を見つめる。
「随分と扇情的な格好をしていらっしゃるのですね?」
上はカッターシャツ1枚、下はまともに着用せずに下着だけという俺の姿を、頭のてっぺんからつま先まで。
「今のご自分の姿を分かっていますか? 院長」
「……」
口角を上げて問いながら、髪を梳いていた手のひらをゆっくりと下へとずらしていく。
身体のラインをなぞられるほど、湯上りでしっとりした肌がシャツを吸い付けた。
「ここまで誘ったのです。いよいよ後戻りはさせませんよ」
背中を強く引き寄せられ、身体同士を密着させられる。
その最中、笑みを浮かべながらも鋭い瞳が、間近で俺の顔を覗き込んだ。
「…。さっきも言ったでしょう、一色先生」
彼よりも劣った身長である俺は、それでも目線を上げて淡々とした態度を損なわずに言葉を紡いだ。
「逃げる真似はしないと」
眉ひとつ動かさずにみせて言う。
「…あぁ、そうでしたね」
一色纏は満足そうな笑みを浮かべた。
そして俺を離さないまま、ローベッドの上へと押し倒した。
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