新しい朝はこんなにも

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一色纏は何も言わなかった。 何も言わずに、絡め合っていた手に力を込めた。 「…目、閉じてください」 少しばかり顔を近付け、静かな声で告げられる。 察して、俺はゆっくりと目蓋を閉ざした。 ーーキスを落とされる感触がした。 だけど、そのささやかに触れるような感覚がしたのは唇ではなく。 どうしてか、額の方だった。 「……一度も目を背けず、ひとつの言葉も怯ませず、一瞬の翳りも見せず。 自らを陥れようとする人間に向かい合う、堂々とした姿勢…」 戸惑いながら目を開けば、どこか寂しそうに微笑む一色纏が俺を見下ろしていた。 「僕が惹かれた、あなたの強さでした」 ぽかんとしている俺の髪を梳きながら、一色纏は覆い被さっていた身体を起こす。 「さぁ、起きて」 未だに状況を呑めない俺の手を取り、にこりと柔らかく微笑んだ。 「身体が冷える前に、舞台から降りましょう」
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