新しい朝はこんなにも

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ーー着替えを済ませてリビングのソファに腰掛けている俺の前に、ティーカップが映り込んだ。 所在なさげに落としていた視線が、はっと丸くなる。 紅茶の…、ホットレモンティーの香りが、そっと鼻先を掠めた。 「どうぞ、淹れ直したんです」 湯気を浮かせるカップを差し出す手を見て、そこから辿るように顔を見上げる。 仰いだ先に見えた一色纏は、柔和に笑っていた。 「温まるついでに、不安や緊張が解れますよ」 「………」 宥めるような声に促されるままに、カップを両手で包むように受け取る。 俺は小さく会釈をしてから、そっと口を付けた。 紅茶の中に馴染んだレモンの風味が、じわじわと口の中に溶けていく。 さっきは味を楽しむ余裕もなく、完飲すらしなかったレモンティー。 改めて通した一口に、好ましい味と高めの温度がもたらす精神の安穏を感じた。 「…ありがとうございます」 「はい、どういたしまして」 身体が温まっていく感覚に小さな溜め息を吐き、少し遠慮ぎみに言葉を送る。 ぎこちないながら礼を言う俺に、一色纏は快さげに頷いた。 「ゆっくり温まって、しっかり落ち着いてください。一人で帰れますか?」 「はい」 「そうですか」 優しく象られた柔らかな笑み。 それはずっと、彼の冷酷な本性を覆う仮面だと思っていたものだった。 「……おや、どうしましたか?」 こちらを労わる笑みから、戸惑いがちに視線を逸らす。 そんな俺の小さな仕草に気付いた一色纏は、不思議そうにして首を傾げた。 「……すみません」 きょとんとした素直な反応に後ろめたさを感じつつ、俺はぽつぽつと躊躇いながら言葉を繋いだ。 「正直…、まだあなたに違和感があって…」
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