新しい朝はこんなにも

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ーー…月明かりだけを頼りにした薄暗い部屋の中、ベッドの上で重なる2人の息遣いが絡み合う。 「ん…っ、ふ、ぅ…」 シャツをはだけさせて無防備に横たわる俺の口内を、那月の舌が愛撫する。 恥ずかしさと躊躇いで逃げようとする俺の舌を、優しく刺激する。 (…あたま…、真っ白になる…) 呼吸もままならなくなって、脳が蕩けていく。 俺は咄嗟に手を浮かせて、那月の服の袖を小さく引っ張った。 「……っ、それ、あざとい」 「え…?」 唇を離した那月が、呼吸を整えながら眉間に皺を寄せた。 怒っているという訳ではなさそうだが、咎められていることは分かった。 けれどどうしてそんな表情をされるのかは分からなくて、俺は彼を仰いだまま目を瞬くしかなかった。 袖が伸びるから、とかだろうか…。 「…ごめん…、なつ、…ん…っ」 慌てて袖から手を離して謝るが、那月はそれを無視して俺の首筋に顔を埋めた。 吐息や髪が薄い皮を擽り、唇の感触に肩が強張る。 「ーーー…っ」 ぎゅっと目蓋を閉じれば感度が研ぎ澄まされ、鎖骨から胸部へと渡り歩くキスに益々敏感になってしまう。 「あ……っ!」 どうにか息を零しながら堪えてみせるが、 ゆっくりと巡る愛撫が胸の突起に触れたとき、その我慢は崩壊した。 「や、…っ。ぁ…ん」 舌先からゆっくりと口に含まれ、吸い上げられる感覚が、電流のように全身を流れる。 俺はとうとう、泣いているような声を上げてしまった。 「ま…まって、なつき。…あ…っ」 一度は申し訳ないと引いた手のひらが、再び那月の服を引っ張る。 耐え難い刺激に、上手く回らない口で懸命に抗議した。 「やだ、待たない」 けれど那月は無慈悲に俺の懇願を一蹴した。 行為を止めず、さらに深く情交に踏み込んだ。 下半身に、手のひらを這わせるーー。 「は、ん…、なつ、き…」 全身を責め立てられ、俺は抱き締めた枕に顔を埋めて喘いだ。 触れた部分全てに残る熱が、俺の理性を解いていく。 ……なんでだろう。 身体に触れられるって嫌なことで、不快で、怖いことでしかなかったのに。 そんな記憶しか持っていないのに。 触れているのが那月なんだって思ったら、嬉しさと気持ち良さで頭がどうにかなりそうになるーー…。
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