新しい朝はこんなにも

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「兄さん」 両手で目蓋を覆う俺に、那月は優しく呼びかけた。 「聞いて、兄さん」 指先を絡めながら手を取られる。 塞いでいた視界が開けた先で、那月は柔らかく微笑んでいた。 「僕は何にも後悔してないよ。あなたを受け入れたことも、あなたとこうして繋がったことも」 向けられたその笑顔に、また、涙が溢れそうになった。 「僕は兄さんのことが好き。 兄さんのことを好きだってはっきり想える自分も好き」 「……っ」 「あなたもいつか僕みたいに、自分のことを好きになってね」 「……なつき…っ」 「ふふっ。泣き虫の顔だ」 小さな笑い声を落として、那月は俺の濡れた目蓋にキスをした。 優しい熱が、そこに灯る。 どうしようもない愛しさが、込み上げてくるーー。 「……続けていい?」 「……ん」 こくりと頷けば、那月は俺と繋がったままでいた熱の器を揺らし始める。 大人しく留まっていたものが、再び奥深くを突く。 「…あ……っ!」 それがもたらすものは、今までのこじ開けるような痛みではなかった。 「あ、あぁっ、あ…!」 変化に戸惑いながら、身を仰け反らせる。 俺の中を滑る熱に、声も、全身も、善がり始める。 …どうしよう。 気持ち良過ぎて、変になる…っ。 「…ぁあっ、な…っ、なつき…!」 ずっと自分を宥めてくれていた手のひらを、両手で握り締めて縋る。 そして激しい律動に自分を見失いそうになっていく最中、存在を確認するように何度も愛しい人の名前を呼んだ。 「好き、兄さん」 「…那月……」 「好きだよ」 「………おれ、も…っ」
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