新しい朝はこんなにも

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ーー…大丈夫。 まだまだ途方もなく道は続いているけれど。 空に手は決して届かないし、地上は想像も出来ないほど広いけれど。 俺はもう独りじゃない。 寄り添ってくれる存在がいる。 その存在を好きになれた自分がいる。 だから俺は、きっと生きていける。 大丈夫、生きよう。 何歳まで生きていられるか分からないけれど、その日が訪れるまでは頑張って歩いてみよう。 子供のように泣いて喚くことは出来ないかもしれないけれど。 笑って生きる人生なら、今からでも遅くないはずだ。 「お腹空いたな、ノラ」 「ぴゃあ!」 「朝ごはんにするか」 生きて、好きな人と日向を歩ける自分に変わろう。 好きな人の笑顔と温かさに見合う自分になろう。 ……そしていつか。 『僕は兄さんのことが好き。 兄さんのことを好きだってはっきり想える自分も好き』 『あなたもいつか僕みたいに、自分のことを好きになってね』 いつか、好きな人を。 那月を好きになって、那月を選んだ自分を好きになろう。 「じゃあ一緒に、那月に”おはよう”しに行こうか」 「ぴゃーっ!」 「はい、重たいからそろそろ降りて」 「ぴゃー……」 ーー朝の晴天に背を向けて、ノラと一緒に部屋へと戻る。 新しい日々へのスタートを切る俺を、心地よい春の風が後押しした。 - fin -
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