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ついこの間、夏休みが終った。 ついこの間ってことは、 まだ気分も日中の暑さも夏休みの時のままだから、授業に身が入るわけがなかった。 高校1年の俺達には受験は終わったばかりのものであって、まだまだ身近に感じられるものではなかった。 だから昼休み後の世界史の授業なんて眠くてかったるいもの以外の何者でもなく、クラスの男子の3分の1は机に突っ伏してうたた寝していた。 俺もそんな一人で、弁当を食べて終わり机に突っ伏していると 「……七瀬君でしょ?」 「そうそう」 「隣のクラスの……」 なんて女子が話しているのが聞くともなく耳に入ってきて、そのまま微睡みの世界に引き込まれていき、 「大地(だいち)、大地。もう5時間目終わったよ」 と肩を揺すられていた。 「……まだ寝足りない……」 「額に腕の跡付けといて、よく言うわ」 勇作が呆れた という顔をする。 「次の時間何だっけ?」 「学活」 「何やんの?」 「さあ?」 そう言うと勇作が首を傾げた。 勇作とは入学してから、席が前後だったことから親しくなった。 親しくなったのは俺の忘れ物、と言っても消しゴムや定規などのつまらない小さな物を「今井、消しゴム忘れちゃったから貸して」って頼み込むことが多かったからだ。 そこから何となく休み時間に話すようになり、ゲームが好きってところで意気投合し、弁当を一緒に食べたり休みの日にどちらかの家でオンラインゲームを一緒にするようになって、 「今井」が「勇作」に。 「青島」が「大地」になったんだ。
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