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エリィさんの話が終わる頃には、僕の目の前に置かれた紅茶はすっかり冷めてしまっていた。
僕の父は殺された。
その事実は言葉として認識はできても、僕の中では現実としての実感がまったくわかない。
写真で白金の狼の姿を見ても、それが自分の父だと認識できなかったことも、あるかもしれない。
そして、僕の心の中におじいさんの言葉が突き刺さっているんだ。
『獣人などには、心を許さないように。お前の母親は、獣人に騙されたのだから 』
おじいさんは、父のことを言っていたのだろうか、と。
あの写真で見た父と母の姿は、とても幸せそうに見えた。
「レヴィから、魔法学校でノアを見つけた、という話を聞いた時には、驚きと共にようやく見つけられた、と、とても嬉しかった」
エリィさんの瞳の奥には、優しい光がこもっているように見えた。
この人は、嘘はついていない、そう本能的に感じる何かがあった。
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