足跡を辿れ

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一人置いてけぼりをくった僕は、しばらく頭が働かず、そこに立ち尽くしてしまった。 すっかり日が落ち、冷たい風が僕の頬を撫でていって、ようやくそこから動かなくちゃ、という気になった。 とりあえず、僕の掌の中にあるこの小さな箱の中にいる子犬を出してやろうと、ホックのような鍵をパチンと外す。 ぽふん!と、まるで蒸気のようなものが一気に出たかと思ったら、小さい子犬ではなく……大きな茶色い毛がふさふさした犬が現れた。 「え、子犬じゃなかったの!?」 思わず最初に出て来た言葉はそれだった。 僕の腰くらいまである高さのある大型犬。綺麗な毛を撫でたら、柔らかい感触……思わずしゃがみこんで抱きしめてしまった。 温かいなぁ……。
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