第一章 白き王と灰色の姫

2/3
前へ
/16ページ
次へ
ギルクイェン王国中部、王都レイヴン。 幾重にも城壁に囲まれた王宮内で、赤子の泣き声が響き渡る。 王室付きの白の魔法使いにより、『時の王はその清きを示すために悪魔との間に子をなさねばならず、その子の性質から、悪魔と人間の力関係を占い、国の行く末を決めなくてはならない』との神託がくだって一年。 生まれた子は男児と女児の双子で、男児は髪色から瞳の色まで真白く、女児は灰色の髪と瞳を持って生まれた。 白の魔法使いの見立てによれば、男児は神の御遣いであり、それを地上に降誕させねばならぬほど事態は切迫しているが、悪魔の力を引き継いだ女児の様相から、悪魔と人間の力は今の所拮抗しているとのことであった。 女児はすぐさま処刑されることとなったが、悪魔である母親が、「呪いを受けたくなければ成人まで育てよ」と告げて自らを魔具のための贄とし、王国を守護する力を王室つきの白の魔法使いに与えたことにより、彼の言――「悪魔の言葉は真であり、ここはひとまず女児の処刑は見送り、様子をうかがうべし」との助言に王は従う意向を示し、元老院もそれに従う決定をくだした。 男児は、将来の可能性を決め付けないために成人を迎える十四まで名をつけないという慣わしにしたがい名がつけられず、女児は、力を制限し、操りやすくするために、グラナダという人の子の名をつけられた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加