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千穂理の気道は、酸素を求めて激しく収縮していた。
ヒューヒューと高い音を立てて空気を吸ったかと思うと、ゲホゲホと汚い音を立てて吐き出す。
「男だったのね……」
傷む喉を押さえながら、パトロールカーに乗せられた和田の横顔を見た。
それは交差点で見た高齢者の顔だ。
真っ赤なルージュは、老人の狂気というより、ホラーコメディー映画のピエロのもののようだ。
「怖い思いをさせてしまった。和田がレンタカーを借りて襲うとは思ってもいなかったもので。
和田は、今晩、あの交差点に現れると考えていたんだ」
「車の所有者が犯人だと分かっていたんですね」
「あなたが犯人は女だと言うので、絞り切れなかった。
でも、マークはしていたんだよ。とにかく、病院で検査しましょう」
千穂理は和田とは別のパトロールカーに乗せられた。隣には野村が座る。
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