口封じ

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「和田って、警察官なのですか?」 「あぁ……、正確には違う。2年前に定年退職したからね。 奥さんに逃げられてから、奥さんの服を着ていたようだ」 「病気ですね」 「それはどうかな。自分の名誉を守るために、目撃者を殺そうとしたんだ。責任能力はあるだろう」 千穂理は変態という意味で病気だと言ったのだが、野村の応えは想像していたものと違った。 「私が乗ったバスをつけてきたんですね」 「そのようだ。でも和田は、どうやって君が目撃者だと知ったのだろう。 事故現場は暗かったし、距離もあったから、君が目撃者だと知ることは難しかったはずだが」 和田がモザイクメガネを使って、自分を不幸にする女を探し出したのだと、 千穂理には分かったが話さなかった。言ったところで信じてもらえるはずがない。 「もしかしたら、警察内部に情報提供者がいたのかもしれませんね」 千穂理が脅かすと、野村は額に皺をつくって黙り込んでしまう。
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