交差点

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道の真ん中に鞄が落ちていた。それを歩道に運んだのは、男から離れたかったからだ。 ドライバーは救急車を呼んだのだろうか? もう、現場に戻ってもいいはずなのに……。 「あれ?」 街灯の下にライトのついた車はあるが、人の姿がない。 千穂理は車まで走り、中を覗いた。 車内には誰もおらず、嗅いだことのない、不快な臭いが残っていた。 「やっぱり逃げた……」 周囲に逃げる人影はなく、通行人もいない。千穂理が警察に連絡するしかなかった。 電話をしながら事故現場まで戻ると、大通りの交差点をバスが横切るのが見えた。 「乗り遅れた……」声と一緒にため息が漏れる。
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