15人が本棚に入れています
本棚に追加
道の真ん中に鞄が落ちていた。それを歩道に運んだのは、男から離れたかったからだ。
ドライバーは救急車を呼んだのだろうか?
もう、現場に戻ってもいいはずなのに……。
「あれ?」
街灯の下にライトのついた車はあるが、人の姿がない。
千穂理は車まで走り、中を覗いた。
車内には誰もおらず、嗅いだことのない、不快な臭いが残っていた。
「やっぱり逃げた……」
周囲に逃げる人影はなく、通行人もいない。千穂理が警察に連絡するしかなかった。
電話をしながら事故現場まで戻ると、大通りの交差点をバスが横切るのが見えた。
「乗り遅れた……」声と一緒にため息が漏れる。
最初のコメントを投稿しよう!