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白昼堂々街の中に現れし未確認飛行物体魔法少女に、現地の市民は混乱した。お母さんは子どもを抱えて逃げ惑い、明らかにオタク風な男たちは夢中でスマホのシャッターを切っている。ベンチで寝ていたオッサンはめんどくさそうに寝返りをうった。
「わたしは、あの時の御恩を返すために志郎さんの元へと帰ってきた魔法少女だったのですっ! さぁ、わたしを好きにしちゃってくださいねっ! わたしはあなただけの、あなた専用の魔法少女ホノカちゃんなのですっ☆」
空高くにあって喜々として叫ぶ魔法少女なる物体は、僕の頭上をひとしきりくるくると旋回すると、急降下を開始。両手を広げ、僕目がけて文字通りに飛んできた。
うわー。やべー、よく見ると凄いかわいいー。フリルだらけのコスチュームも、柔らかそうでたまんねー。それよりなにより、そもそも小さな顔がね、僕の好みにどストライクだし、小柄なのにすらりと長いおみ足とかほどよいバストのサイズとかもベリーグー。そんな子が「僕専用」とか宣言して胸に飛び込んでくるわけかー。これ拒否する理由ないわー。
「て、んなワケあるかー!」
僕はわずかに残った理性を総動員し、顔の眼鏡に手をかけた。こんなの全部こいつの仕業だ。クオリア・コンバーターのせいなんだ。うっかり騙されそうになったしこのまま騙されてたほうが幸せっぽいけど、僕はこいつを外してやる。現実に、帰るんだ!
「ああっ! それは外しちゃダメって約束したのにっ!」
それを阻止しようと、穂乃果さんの手が伸びる。
「知らなかったのか、魔法少女ホノカよ? 自分に不利益な約束は、守らなくってもいいんだぜ!」
僕は、眼鏡を外した。
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