クオリア・コンバーター

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 珍しく定時で仕事を切り上げた僕がアパートの部屋の前まで来ると、まるで見計らったかのようにドローンが舞い降りてきてこう言った。 「秋月志郎様ですね? 小包をお届けに伺いました」  とてもじゃないが、四つのプロペラで音もなくホバリングしているドローンから話しかけられているとは思えないほどの自然な音声だ。これが全て自動制御だというのだから恐れ入る。プライベート保護の観点から、カメラは非搭載なのだが、各種センサーによって障害物を回避し、衛生からの位置情報で正確に移動する。配達対象の認識は、僕の持つスマホと連携しているからこそ可能なわけだが。 「あ、どうも」  と、僕はドローンからぶら下がる小さなダンボール箱をフックから外して受け取った。フックの解除は、僕のスマホがすでに勝手にやっている。これが受け取りのサインの代わりにもなっている。 「毎度ご利用ありがとうございました。次回も是非ご利用ください」  仕事を終えた黒いネコのマークがついたドローンは、夕日の中へと消えてゆく。「ご苦労様」と見送っていると、ドローンはカラスにつつかれて墜落した。
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