クオリア・コンバーター

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 僕は可愛らしいハートのシールの封緘を丁寧に剥がすと、逸る気持ちを必死に抑えつつ中の手紙を取り出した。手汗もひどいし、アルコール飲めないのにアル中になったのかと思うほど震えるし、過呼吸寸前なほどに呼吸も乱れているが、遠くなりかける意識を必死に手繰り寄せると、霞む目で文字を追った。  大人の女性を思わせる、毛筆の美しい手書き文字。手書き風ワープロソフトを使っているのかと疑ったが、文字は確かに墨で書かれている。濃淡や掠れなど、ちゃんと一文字一文字違っている。こういう細かい所をチェックしてしまうのは僕の悪い癖だが、ともあれ拝啓から始まる丁寧な手紙には、要約するとこうあった。 「是非会いたい、ただし、会う際にこの眼鏡は必ずかけること、そして絶対に外さないこと、か……」  ふむ、と頷いたあと、僕は。 「めちゃくちゃ怪しいいいい!!」  と、叫んでいた。
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