クオリア・コンバーター

9/16
前へ
/18ページ
次へ
 僕にしては大胆な行動だ。初対面の、しかもこんな美少女……かな? 落ち着いて見えるけど、高校生でも通用しそうなほど肌に透明感があるから、年齢が推測出来ない。化粧もしてるのかどうかって感じ。ナチュラルメイクにしてもナチュラル過ぎ。な、女子の手を、いきなり握って自分から引っ張って行くなんて。自分が自分じゃないみたいだ。まぁ、それほどに人目を恐れるチキン野郎だとも言えるけど。 「ちょ、ちょっと待って。わ、わたし、実はその」 「ごめん、高槻さん。初対面の挨拶もしてないのに手を握るなんて、図々しいことこの上ないし失礼なのは分かってるけど、もう少し人気の無いところに出るまで我慢してください。お願いします」  もう結構走っている。その間も、ずっと人に見られている。想定外な慣れない状況に置かれてしまった僕の手は、きっとべたべたしてるはず。息も切れてきてはぁはぁ言っちゃってるし、これで人気のないとこ行こうとか、冷静に考えると変態みたいでかなり危ない発言だろ。怖がられて普通。 「い、いえ、手を握られているのは……むしろ嬉しいんですけど、あ、じゃ、じゃなくって」 「は?」  聞き間違いか? 今、嬉しいって言わなかった? 驚きのあまり、僕は足を止めて振り返った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加