「死にぞこないの花」レビューのようなもの

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イオリの前に現れる謎の少女ヒロミ。イオリの友達を自称する彼女の正体はかつて虐められていた少女(なんとイオリのお母さん! ドボォ!)が「捨てた」もの。彼女もイオリと同じで捨てられた物なのです! 翻って死神さんはどうでしょう。彼女もヒロミと同じくお母さんの妄念が生んだ人外の存在。けれどヒロミと決定的に違うのは、彼女は望まれて生まれたものなのです。しかも奇しくもヒロミを生んだ少女に望まれて生まれたのです! 業が深い!! ドボォ! っていうのは置いといて。 だからなんとなく、最後にイオリが選ぶのはヒロミがしっくりきます。捨てられたモノ同士で惹かれあう。多分お互いにしか分からない闇を抱えあっているから。 では死神さんは? 彼女は「望まれた存在」であることを知っています。それは彼女のアイデンティティやプライドと呼ばれるものに直結している概念ではないかなと思いました。 助けを求める子どもの前に現れて、意地悪な言葉をかけつつも、その子を守り支える。そんな高貴な騎士みたいな誇りが死神さんを支えている。 だから彼女はヒロミのような存在に付け込まれる訳にはいかない。イオリみたいな捨てられて、藁にもすがる弱い存在とは違うのです。イオリは藁にすがれるけど死神さんがそういうことをすると死神さんは死神さんで無くなってしまう。そんな気がします。 そうとは分かっていても。 死神さんだってみんなと仲良くしたいんじゃないかなと思います。年賀状特別編「暗闇の底で見る夢は」によると彼女は否定していますが。というか、そこで肯定してしまうと彼女のアイデンティティが成り立たなくなってしまうのかと思います。 なんだか可哀想、と言うと死神さんに笑って罵倒されそうですが(ご褒美)強くあらねばならない人の悲しさ、寂しさを物語っているような気がします。 イオリもヒロミも寂しくて、とても辛い思いをしているのだけど、でも寂しいと言うことができない、思うことすら出来ない死神さんはどう言う気持ちで日々を送っているのだろう、と思います。そりゃ豹変もするわ。 (つづく
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