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「なあに。」
「流産してなかったら、どうしてた?」
「産んだ。それで、剣道やらせた。」
「本人の意思は?」
「聞かない。やめたければインターハイで
優勝してやめろって言う。」
「無茶苦茶だ。」
「才能はあるはずでしょ、あなたの子
だもの。」
訊かなければ良かった。賢一は後悔した。
理美に思い出したくないことを思い
出させただけかもしれない。黙り込んだ
賢一に理美は何かを察したように言った。
「わたしは大丈夫。忘れてはいないけれど、
もう自分の中で決着がついてる。」
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