第2章

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「え…」 突如話を豪快にぶった切られて驚く私。 「ドレスが趣味にあわないからとか、そんなしょうもない理由で 君みたいな 真面目でやや頑固で融通の利かない真っ直ぐでいて 周りの意見を気にしてしまいオドオドしてしまう 子がそんなはずはないよ ね?」 一気に話したあと、猟師さんがこちらを見る。 まくし立てて話していたので何故か肩で息をしている。 その目は壁にある鹿の剥製のように暗いのに、熱がこもっている。 怖い。 「ちょっ…えーと、」 「君は親の決めた相手と結婚するのが嫌でお城を出てきたんでしょう」 「それは…まあ、そうですが。」 顔も名前も知らないし面識もないけど。 「その理由、僕にはわかるよ。 それは君には他に結婚したいと心に決めた相手がいて その男の元へ行こうとしていたんだよね?」 「…は?」 「日頃の行いが良いんだろうね。君は。 運良く目の前にその男が現れて 今こうしてひとつ屋根の下一緒に暮らしているじゃないか! 僕もずうっとこの時を待っていたよ! いつ君が城を脱走してきても良いように、常日頃から君の周囲をうろつき、 一挙一動を常に五感で把握して、 最近は布の擦れる音で君が何の服を着ているかわかるようになったよ! もう昨日と今日、大変だったんだ。夢にまで見た君が僕の側にいる。 自分を抑えられるか。君の寝顔を見て何度襲おうと思ったか。 とにかく幸せだった。」 あたりに花が飛んでいるのではないかというキラキラとした瞳をこちらへ向け 壊れたカセットテープのごとく早口で語り続ける猟師さん。 しかし、猟師さんがフーッと一息ついたと思ったら 「だけどもう今日でそれも終わりだ。」 そう言って銃口をこちらへ向けて来た。
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