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『いやぁぁぁあぁ!』
悲鳴を上げながら逃げる女性。この女性が最初の犠牲者になり、物語が始まる。
ただ、暫く彼女は見付からない。何もない日常の中で、誰かが彼女の不在に気付き、周囲の人間が事件を知る事になる。
でも、と思う。
命の危機に瀕するような緊迫した状況で、ここまで大きな声を上げる事が可能なのだろうか? と。
いや、逆に命の危機に瀕しているからこそ、助けを求めよう、命を守ろうとする本能が、大きな声を出させるのかも知れない。
映画ではこの後、沢山の人間が悲鳴を上げる事だろう。そして沢山の人間が死んでいくのだ。
それなのに殺人鬼は、どんな攻撃を受けても生き抜いていく。
なんて理不尽。だからホラー映画は嫌いなんだ。
だけど私は、そんな結末を観る事は無いだろう。自分の指先に、生暖かい液体が伝わるのを感じる。
それは、私の命。
私の命が流れ出していく。
それなのに、頭だけは冴えている。
隣に彼の存在を感じる。だけどもう、それに恐怖を感じる事は無い。
私の瞳には、危機を知らず、まだ日常を送る人々の姿だけが、映されていた。
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