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若菜に案内されたのは綾崎邸の離れだった。
畳の十畳ほどの部屋であり、その他に台所、風呂、トイレが付いている。
畳の上には旅館にあるような木目の机がおいてあり、僕はそこにちょこんと座り部屋を眺めている。
どんだけ金持ちなんだ…
ここで生活出来るわ…
若菜というと着替えて来ると言って離れを出ていった。
「失礼いたします」
襖が開き若菜が入ってきた。手にはポットを持っている。
「今お茶を入れますね」
なれた手つきで急須にお茶葉っぱを入れポットからお湯を注ぐ。
「若菜…あっそうだ、ごめん
久しぶりなのに名前で呼んだりして…」
「いえ、名前で呼んで下さい
あの頃のように…」
若菜はゆっくりと急須からお茶を注ぐ。
「うん…ありがとう」
なんだか気恥ずかしくなり若菜から眼をそらしお茶を頂く。
お茶は丁度いい温度で甘みがわかる。
「おいしい…」
「ふふっ、おそまつさまです」
僕は幸せだ…この笑顔を見るために京都に来たんだ…
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