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9月も半ば。日の暮れた帰り道は、夏用の半袖セーラー服には少し肌寒いくらいだった。
隣県とは言え、200kmほどの距離をバスで帰って来たので、学校に着いた時にはすでに日が暮れていた。
黙ったまま並んで歩く、私、小田 小百合と、坂本
薫。
「・・・小百合はさ・・・いいよね・・・」
そう言って、薫は私の手元を見た。
私の右手には、黒い頑丈な四角い鞄・・・トランペットの楽器ケース・・・。
それまで音楽には全く縁遠かった私が、吹部に入り、希望者多数で厳しい楽器オーディションに受かり、トランペットに配属されたのは、4月末のこと。
誕生日にトランペットを買って貰った。
今でこそ支部大会にも出場出来る二中だが、元はコンクールにも出られない年もあったほどの弱小部で、学校所有の楽器はお世辞にもきれいとは言えないものだったので、部員の半数ほどはマイ楽器を持っていた。
トランペットやフルート、クラリネットなどは、特にマイ楽器率が高かった。
他の楽器に比べれば比較的購入し易い価格からある、という点に加え、吹奏楽の花形ということで人気があり、希望者も多い。
マイ楽器を持っているとその楽器以外になる可能性が低くなる、ということも一因だった。
「うちの親は、買ってくれないからなぁ~。」
薫はそう言うと、足元に目を落とした。
私と薫は、トランペットの一年生部員。
支部大会で三年生が引退し、楽器のバランスが崩れた。
ホルンやパーカッションは二年生がいない。
ユーフォニアムやバスクラリネットは三年生しかいなかったのでゼロになった。
おそらく、次の練習から、楽器を変えられる子が出てくる。
そう二年生の先輩に言われた薫は、マイ楽器のない自分への打診だと泣いていた。
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