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ふう~・・。 生徒会室で今日の仕事を終えたオレは、帰り支度をしてパソコンの電源を落すと、そこに弟の勇人がひょっこり顔を出した。 「あれ、夏兄まだいたの?」 「帰るところだ。勇人こそどうした?」 「ん、忘れ物」 机の引き出しからスマホを取ってメールをチェック。 恋人である、高坂からでも来ているのか確認しているようだ。 ニヤニヤしているところを見ると当たりみたいだな。 「帰るぞ・・」 「あー、待って」 施錠をして寮へと向かう。ふと時計を見ると22時を過ぎたところだった。 「勇人、食事は?」 「ん・・食べたけど・・夏兄が行くなら付き合うよ」 「いいのか?」 「うん・・」 「じゃあ、行こう」 誰もいない校内を眺めながら歩く。 あと少しで卒業か・・・。 あっという間の三年間だったな。 「もう少しで夏兄たちも卒業だね・・」 「ああ、どうした?寂しいのか?」 「うん・・」 しょぼんとする勇人。 オレのかわいい弟。 つい最近まで存在を知らなかった家族。 愛おしくて愛おしくて堪らない。 勇人のためなら何だってするだろう。 「だって・・」 「大学はすぐ隣だし、会おうと思えばいつだって会える」 「ホントに?」 涙ぐんだ瞳で上目使いで見つめられてドキッとする。 落ち着け、勇人は弟だ! 「ああ・・」 保障はできないが、今はこう言うしかない。 大学生になったら、おそらく仕事の手伝いをすることになるだろう。 オレは、父さんの下に就くことが決まっている。 拓也も高坂も・・・多分。 男同士の恋愛は学生の間だけってことが多い。社会人になれば、それだけ障害も多くなる。 勇人と高坂も将来どうなるか、オレが心配しても仕方がないが。 できれば添い遂げてやりたい。でも二人の気持ちが離れることだって・・・いや、こんなことを考えるのは止めよう。 「大学の寮もすぐそこだしな・・」 不安がる勇人の頭をなでてやると気持ちがいいのか嬉しそうに笑った。 「そういえば、前から思っていたんだけど・・」 何か言いたげにオレをじっと見る。 「ん、何だ?」 「夏兄には、スキな人はいないの?」 その言葉にドキっとした。 「・・・」 「夏兄?」 「スキな人・・か・・」 オレにもそんな人がいた時期があった。 その人は今、大学にいる。 『夏樹が好きだ』 心地よい風が頬を撫で、忘れかけていた記憶を呼び覚ます。
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