1話 金髪とカエル

2/4
前へ
/7ページ
次へ
カーテンを開けると、雨が降っていた。 「雨か…。」 気持ちが重くなった。紫陽花が外で雨に打たれ、項垂れているようにみえる。 でも、気持ちの重さの原因は、雨だけじゃない。 きっといる。今日はいるだろう。 スカートの下にジャージを着た。 ダサい。 でも、楽なのだ。この方が動きやすい。 髪は…雨の湿気でボサボサ。もう、知らない。きっと、何をしてもハネてしまって無駄だと思う。 家を出た。傘をさして、高校に向かう。 学校行きのバス停までは、家を出て小道を抜けなければならない。 その小道に、小さな空き地がある。本当に小さな空き地だ。真ん中にベンチがある。周りは紫陽花で囲まれていて、それらが満開になると美しい場所。 雨の日は、そんな美しい場所に問題が発生する。 「あっ、無視女!」 そうやって手を振るのは金髪の少年。見た目は同い年くらいである。濡れてるはずのベンチに座り、傘をさしている。 ほら、問題発生だ。 私は、それを無視した。 「また無視?!」 彼は大きな声でそう叫んで、私の後をついてくる。 「私、学校行くんです。ごめんなさい。」 私は、それだけ言うと大通りに出る。彼はいつも大通りまではついて来ない。 最初は新手のナンパかと思っていた。 でも、スカートにジャージ、すり減った汚い靴、そしてボサボサ髪。 こんな女子力ゼロの私に、ナンパはあり得ない。 そうすると、彼はなぜ声を掛けてくるのかよく分からなくなった。 彼は、雨の日だけ必ず現れる変な少年なのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加