1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
放課後
雨は相変わらず止まない。
…ということは、まだ居るだろうか。
大通りから小道に入った。
…最悪。
ベンチに透明の傘が見えた。まだ居たのか…。
「おい、無視女。」
私は、無視女と呼ばれているらしい。不愉快だけれど名前も教えてないし、しょうがない。
美しい金髪が、私の目を奪う。ぱっちりした栗色の瞳。透き通るような肌。そして、手に持っているのは綺麗な緑色のカエル。
…カエル?!
私は彼の手の中にあるカエルをじっと見つめた。
…本物だ。
っていうか、やっぱり変な奴だ…
変態か?カエルを持ってこっちを見て笑う変態か?
いや、カエル持ったからって変態な訳ない。いや、でもカエル…
いや、全国のカエル好きさんと、本物の変態に謝れ私!!
いや、なんで知らない人に謝ってんだ私!!
…思考が爆発した。
奴の前で足を止めたのも初めてだし、無駄に人見知りして訳の分からないことを考えてしまった。
「あれ、カエル苦手だった…?」
少年はニコッと笑って首を傾けた。
いつも顔を見ずに無視してきたから彼の顔をしっかり見るのは初めてだった。
可愛いらしい笑顔が私の心に何かを突き刺した気がした。
「いや…あの。ごめん。家…帰らなくちゃ。」
私はそれだけ吐き捨てて歩き出した。
……顔が熱い。
「あっ。」
彼はきょとんとした顔で私を見送った。
最初のコメントを投稿しよう!