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「紗愛!」(さあい)
私は友達の杏奈に名前を呼ばれ、振り返った。
廊下で窓の外を見ていたが、今日は午後の授業が眠くなるほどの快晴で気持ちがいい。
まだ午前中の休み時間というのに、眠たくてたまらない。
「今度、大田の友達と遊び行くんだけど、どう?」
「大田くん…?」
大田くんはクラスメイトの男の子である。切れ長の目にクールな風貌。サッカー部の部長さんだ。
彼と杏奈は仲が良い。
私はそんなに仲良しな訳でもない。大田くんならまだしも、その友達だったら気まずくはないだろうか…。
「何で大田くんじゃなくて、その友達なの?」
私がそう聞くと、待ってましたとばかりに杏奈は答えた。
「アイツの友達が東京の高校通ってて!その人が、帰省ついでに東京の友達を連れてくるみたいなの!」
私は眠気が吹っ飛んだ。
東京の高校生…!
「行く!!」
不安な気持ちは何処へ吹っ飛んだのか、私は迷う事無く答えていた。
私の憧れ、それが東京である。
欲しいものは何でも手に入り、楽しいこともきっと沢山ある。夜も煌びやかで…お洒落な人も沢山いる。
わたしもそんな街に溶け込みたい。
とにかく、田舎者の私にとってはキラキラした夢のような場所なのだ。
私は『東京』という言葉に気分が良くなった。
…東京の友達ができるかも…いや、もしかしたら…彼氏…とか…!?
妄想も、気分も高まるばかりだ。
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