2話 東京

2/3
前へ
/7ページ
次へ
「紗愛!」(さあい) 私は友達の杏奈に名前を呼ばれ、振り返った。 廊下で窓の外を見ていたが、今日は午後の授業が眠くなるほどの快晴で気持ちがいい。 まだ午前中の休み時間というのに、眠たくてたまらない。 「今度、大田の友達と遊び行くんだけど、どう?」 「大田くん…?」 大田くんはクラスメイトの男の子である。切れ長の目にクールな風貌。サッカー部の部長さんだ。 彼と杏奈は仲が良い。 私はそんなに仲良しな訳でもない。大田くんならまだしも、その友達だったら気まずくはないだろうか…。 「何で大田くんじゃなくて、その友達なの?」 私がそう聞くと、待ってましたとばかりに杏奈は答えた。 「アイツの友達が東京の高校通ってて!その人が、帰省ついでに東京の友達を連れてくるみたいなの!」 私は眠気が吹っ飛んだ。 東京の高校生…! 「行く!!」 不安な気持ちは何処へ吹っ飛んだのか、私は迷う事無く答えていた。 私の憧れ、それが東京である。 欲しいものは何でも手に入り、楽しいこともきっと沢山ある。夜も煌びやかで…お洒落な人も沢山いる。 わたしもそんな街に溶け込みたい。 とにかく、田舎者の私にとってはキラキラした夢のような場所なのだ。 私は『東京』という言葉に気分が良くなった。 …東京の友達ができるかも…いや、もしかしたら…彼氏…とか…!? 妄想も、気分も高まるばかりだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加