1.ー不覚

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ーー『シアーズ』としての、私の真偽を視れる力を……悪用、されるわけにはいかない。 ミスティは固唾(かたず)を飲み、道に迷ったと言うセロの背後を指し示す。 「セロさんの後ろにある細道を抜けると、街に出ますよ」 ではこれで、と続けて言い切り彼女は家路(いえじ)を急ぐ。きょとんとする彼を放置して……。 「ありがとな、ミスティッ。あのさ……っ」 静寂に包まれた空間に何とも間抜けな音が響き渡る。ピタリと足を止め、彼女は振り返る。 「…………」 「…………」 から笑いをして頭をかきながら腹をさする彼の姿。 ーー何か、放っておけない……。 自分の世話焼きな性分に、ため息一つ吐く。 「良ければ私の家でご飯食べて行きますか」 「えっ、良いのか。ありがと」 その時、セロが浮かべたーー笑み。その陽だまりのような明るい笑顔が、あの人に似ていて……知らず知らずの内にミスティの口が緩く弧を描く。 「いえ、気にしないで……って、どうかしましたか」 急に勢いよくそっぽを向く彼を不思議に思い、問う。 「な、何でもないっっ。気にしなくて良いからっ」 声を張り上げた彼の耳は、ほんのり赤い。
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