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ーー『シアーズ』としての、私の真偽を視れる力を……悪用、されるわけにはいかない。
ミスティは固唾を飲み、道に迷ったと言うセロの背後を指し示す。
「セロさんの後ろにある細道を抜けると、街に出ますよ」
ではこれで、と続けて言い切り彼女は家路を急ぐ。きょとんとする彼を放置して……。
「ありがとな、ミスティッ。あのさ……っ」
静寂に包まれた空間に何とも間抜けな音が響き渡る。ピタリと足を止め、彼女は振り返る。
「…………」
「…………」
から笑いをして頭をかきながら腹をさする彼の姿。
ーー何か、放っておけない……。
自分の世話焼きな性分に、ため息一つ吐く。
「良ければ私の家でご飯食べて行きますか」
「えっ、良いのか。ありがと」
その時、セロが浮かべたーー笑み。その陽だまりのような明るい笑顔が、あの人に似ていて……知らず知らずの内にミスティの口が緩く弧を描く。
「いえ、気にしないで……って、どうかしましたか」
急に勢いよくそっぽを向く彼を不思議に思い、問う。
「な、何でもないっっ。気にしなくて良いからっ」
声を張り上げた彼の耳は、ほんのり赤い。
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