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そう告げ穿たれた木の杭の前に、野花の花束を供え背を向けた。
ーーあれから、もう…………三年、経ったんだ。
ミカン色の髪に空色の瞳を持つミスティ=クラウディアは、以前と打って変わり穏やかな表情をしていた。
城を出た後、故郷であったこの地に戻った。そして、弔いと故郷を出てからの十年間分の報告をしたのだ。
自分の住む小屋に帰ると、食材があまりないことに気づく。
「買いに行かないと、もたない……か」
買い物かごを手に取り、フードが付いた薄手のコートに着替えミスティは小屋を出た。この小屋は、あの事件後でも辛うじて骨組みが残っていたのを建て替えたものだ。
照りつく太陽を見て、慌てて水筒を携えた。次第に暑さが増すこの季節ーー夏の始め。
「どうか……今日も何事もありませんように」
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