0.ーあなたを想う

3/3
前へ
/176ページ
次へ
そうミスティが祈るのには、ちゃんと理由があった。買い物に出かける町がマルケルーー以前メイドとして行ったことのある城下町付近だったからだ。 だから買い物に向かう時は城の関係者に出会わぬよう、季節関係なくフードを被るのだ。 ーー何度か城の人とすれ違ったことあるけど、バレなかったし大丈夫だと思うけど……。 何故か胸のざわつきは大きくなるばかり。 大小様々な雑草の生える細道を、慣れた足取りで彼女は歩く。 『用を終えたら必ずここに戻ってくることーー約束ですよ……』 ふと思い浮かぶは、城を出る時に見送ってくれた執事ーーシンレイの姿と約束の言葉。でもーー。 「戻れる、わけ……ないでしょ」 頭が自然と下がっていき、当時言えなかった本音をこぼす。 例え許されたとしても、過ちはーー消えない。かつて自分のした所業を思い出し、ため息をつく。約束はしたが、もうあの場所に戻るつもりはーーない。それが、己に課した罰なのだから…………。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加