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1.ー不覚
考え事をしながら歩いていると、目的の町にミスティは着いた。さっさと買って帰ろうと目当ての店に向かい、足を早める。胸騒ぎは止まらないーー。
「毎度ありっ。今日は慌ててるみたいだけど、どうかしたのかい」
「ええ、ちょっと急いでて……だから、今日はこれで」
嫌な予感から自然と行動が早まっていたようだ。馴染みの店で必要な物を買い揃えると、行き同様早足で歩く。彼女は三年間、外出の際店以外では視線を下に向けている。念のためだ。だが、これがーー。
「わっ」
「きゃっ」
仇になるとは、考えてもいなかった。
「いたた……」
レンガ敷の上でミスティは尻もちをつく。先程の衝撃から察するに、誰かとぶつかってしまったらしい。
ーー今日は嫌な日だなぁ……。
遠い目をして現実から目を反らそうと試みる。
「ご、ごめんね、お姉さん。ぼく急いでて前、見てなく、て……って、あれ」
ぶつかった相手はすぐに謝るも、言葉が途切れる。
ーーどうしたんだろう……。
目をぱちくりさせ相手の顔をよく見ようとするが、逆光でよく見えない。
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