1.ー不覚

2/7
前へ
/176ページ
次へ
「ミス、ティ……お姉、ちゃん…………」 「えっ……」 その呼び方をする人物に心当たりがあった。 ーーまさか……。 風が強く吹き、その人物の真後ろに会った太陽が雲に隠れる。そして、その顔がようやく目に入る。 「オリン……くん」 呆然とする自分は手を引っ張られ起こしてもらうと、少年はにこやかに笑う。 「うん、そうだよ。ひさしぶり、ミスティお姉ちゃん」 彼とはメイドとして働き始めて間もない頃、マルケルで出会った。 以前会った時より背丈は伸び、目線が近くなり、髪は短く切り揃えられていた。けれど、微笑む顔は変わってない。 何故バレたのか……ミスティは頭に手を置くと、布の感触がない。もしやと襟元(えりもと)を探り引っ張る。視界の端にフードが見えた。 ーーきっと、ぶつかった時とれたんだ……。 オリンは城の関係者ではないが、彼の親戚にはあの人がいる。これからどう説明してこの場を切り抜けるか、頭を悩ますミスティであった。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加