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ミスティがうんうん頭を悩ましていると、オリンは無邪気にオリンが口を開く。
「ねぇ、ミスティお姉ちゃんって今ーー」
「あっ、急用思い出した。またね、オリンくんっ」
彼が話し出すまでに良い言い訳が思い浮かばず、咄嗟にフードを深く被り直し、その場を去る。制止の声が聞こえたにも関わらず……。
ーーここまで来れば……大丈夫、かな……。
町を抜け雑木林まで全速力で駆け抜け、息が上がる。初夏でまだそこまで暑くないものの、背中にはじとっと汗をかく。
「まさか……オリンくんに会うなんて」
走っていた足を歩くのに切り換え、小石や雑草が生えるあぜ道を進む。
ーーしばらく、町に出るのは控えよう……。
オリンは年にそぐわず、察しが良い。今日あの場で出会っただけでも、何かしら悟るだろう。最も自分の知る中で一番洞察力の鋭いあの人に出会わなかっただけ、マシと考えるべきか……。
顎に手をあて思案に暮れていると、喉が渇きを訴えた。自然と水筒に手を伸ばすーーが。
「…………ない」
先程の逃走劇でか、中にあった水がほとんど出たようだ。やむなくミスティは近くの小川を目指した。
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