『雷歌』

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『雷歌』

「『物語』とは人の頭の中にあるものだ。」 博士は言いました。 とても悲しそうに… でも私には解らない話でした。 私は過去でしかありません 私は『残骸』です。 どれだけ博士が私に対して何かを求めようと私はそれに応じることはできないのです。 きっと博士も知っているのでしょう 『幸せ』なんて『過去』からはもう得ることはできない… それは虹を追いかける子供のように 雲に手を伸ばすように もしくは太陽を欲しがるように 私は『ライカ』 今日も長い黒髪をなびかせ『物語』を聞くために小さな躯で絵本を抱えて背中の丸くなった博士の所に走ってゆきます。
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