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No.6『閑古鳥』
「客が来ない…」
大通りの裏道を左に曲がった所にある廃ビルの駐車場の奥、隠れた路地に『雷万華鏡店』はあった。
そこで店主をしている灰色の長い髪を後ろに結い顔の整った少女ははため息混じりで呟く
この店は曰く付きの骨董品を主に取り扱っている
時に
『時間を巻き戻す発条時計』
時に
『あの世につながる黒電話』
時に
『飲みたい飲み物が湧く硝子の杯』
時に
『行きたい所に一瞬で行ける世界地図』
そんな骨董品ばかり扱っているが客はここ『60年』ぐらいは全く来なくなってしまっている
人間は文明を築いて行くうちに科学の光で闇を照らすようになった。
その為こういった道具は必要なくなり今ではこの店も屋根の上では閑古鳥が鳴いている
「やぁ繁盛しているかい?」
店にタキシード服に身を包んだハット帽子の黒山羊が入ってきた。
彼もまた『商人』の一人だが彼女とは扱っている『モノ』が違う
「繁盛なんてするわけないっしょっアホ山羊」
少女はカウンターに置いてある『必ず好きな飴が出てくるルーレットマシン』のボタンを押して大玉の青りんご飴を出しながら悪態をついた。
「最近じゃ人間にあった信仰もなくなってきたからここの商品の幾つかは力を失ってただのガラクタになったわ」
「それはそれはお気の毒に」
黒山羊は嬉しそうに言う
「しっかし『灰色の魔女』も随分堕ちたね昔は伝染病だとか人間が戦争を起こすよう私と楽しく仕向けたっていうのに今じゃボロ小屋の店主とか…笑える」
「…あなた丸焼きにして喰ていいかしら?」
「冗談が通じないねェ」
少女と黒山羊が笑った。
「そろそろ私、店畳もうと思うの」
「へぇ、次はどこで何をするんだい?」
突然少女は微笑みながら黒山羊に言い黒山羊はその答えを促す
「嫌ね…あなたになんか絶対言いたくないわ」
少女は黒山羊に舌を出して言う
「だって私、あなたがずっと大っ嫌いなんだもん」
少女がそう言った瞬間ぐにゃりと風景が歪み気がつくと少女は消え残されたのは『雷万華鏡店』だった廃屋と黒山羊だけになった。
屋根の上に『対象に過去の記憶を見せる閑古鳥の人形』が壊れたように不自然に鳴きつづけている
黒山羊はため息混じりで呟いた。
「俺はお前がずっと大好きだけどな」
今日も閑古鳥が鳴いている
『黒山羊の手記『灰色の魔女』中編より』
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