第一章 嵐は突如やって来る

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「1000リンドと言いたいがなんせ使いきりだから500リンドでいい」 表情を変えずに青年は言う。 「ホント? ありがとう!」 嬉しそうに女性は満面の笑みを浮かべる。 「毎度」 青年は嬉しそうな女性とは違い何食わぬ顔でお金を受け取った。 「やった! ラッキーしちゃった」 嬉しそうに鼻歌混じりに女性は颯爽と立ち去った。 「(さっきの女。 何て目をしてやがる。 あの石の本当の威力に気づいてるのか? ……まさかな)」 嬉しそうな女性の瞳を思い出しながら青年は考え込む。 そんな気難しい顔をしている青年の前に一人の少年がふらりと現れた。 茶色の髪の毛をサラサラとなびかせている少年は、少女にも見える。 可愛い茶色い瞳で少年はある商品をジッと見ている。 「…………。 (子供の客か)」 少年があまりにも険しい顔をしているのが気になったのか青年はジッと少年の行動を見ている。 「(さっきの客と似ているな。 親子……じゃないよな。 こんなデカイガキいるようには見えないし。 姉弟か?) さっきの女性に似ている……。 トーマはより一層少年を見つめる。 ササッ!! 何と少年は青年が見ている目の前で堂々と商品を懐に入れた。 そして次の瞬間、猛ダッシュで去った。 「……店じまいだな」 目の前で物を盗られた青年だが慌てることもなくマイペースに片づけを済ませ、少年が去って行った方向へと歩いていった。
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