第一章 嵐は突如やって来る

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「たぶんな。 俺は専門ではないからわからん」 呼吸を整え少年は答える。 「ガキだからな」 特に少年の答えを気にすることもなく青年は澄まして言う。 「違うって言ってるだろうが」 青年の言葉に少年は何故かムキになる。 「それはどうでもいい。 持ってるもの返してくれ。 商売あがったりだ」 そう言って青年は少年の前に手を出した。 「やだ」 少年は青年の手を思いっきりはじいて睨みつけた。 「ガキ……」 はじかれた手をプランプランさせながら青年は少年を凝視する。 「俺にはこれが必要なんだ」 青年から奪った玉を少年は握りしめている。 「ならママに買ってもらえ。 そんなただの玉何に使うんだ?」 少年の強情さに青年は頭が痛くなってきた。 「これはただの玉ではない。 魔力の結晶だ。 魔導士が魔力を高めるときに使うこともある代物だ。 使うものが使えばそれ相応の価値がある」 大人びた口調で少年は答える。 「お前、詳しいな」 あまりにも大人びている少年を青年は内心警戒している。 「知識として当然だ」 何食わぬ顔で少年は言う。 「なら尚更返してくれないか。 お前みたいなションベン臭いガキが持てる代物ではない」 青年は再度少年に手を出した。
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