棲み処。

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私は大量のお茶やコーヒーを飲み干し、臨戦態勢を整えると、布団にくるまりながら虫達の出現を待った。 昨日は室内は真っ暗であった為、状況を上手く把握出来なかったし、暗闇故に無駄な想像力が働き恐怖が増幅された可能性も無いとは言えない。 もしかしたら、業者の人が言う様に本当は、大して虫はいなかったと言う可能性もある。 確かに私が数匹のゴキブリの出現にパニクって、ありもしない状況を強いイメージとして、作り上げてしまったのかも知れない。 もし、その私の思い込みが全ての要因となっているなら問題は解決する。 私がカウンセリングを受けて、精神状態を安定させればいいだけなのだから。 だが、もし私が見たものが間違いでなかったとしたら……? そう考えた瞬間、私の背筋に悪寒が走る。 怖い…。 怖い――。 怖い――――!! 恐怖のみが全身を駆け巡る。 だが、それでも先ずは確かめねばならなかった。 あの出来事が現実なのか幻覚なのかを…。 そうしなければ、相談する事すら出来ない。 私は、そんな事を何気に考えながらも取り敢えず、テレビをつける事にした。 黙って待つ時間とゆうのは、異様に長く感じる。 何より恐怖が、紛れるだろう。 だが所詮、それは一時の事に過ぎなかった。 私がそれを認識したのは時間が0時を過ぎた頃…。 不意に壁が黒く染まる。 (えっ……!? 壁が急に黒く……??) 私は、部屋に突如として起こった異変に気付き、窓際の壁に視線を移す。 蠢く黒い塊。 良く目を凝らすと、それは無数の虫が寄り集まり移動する異常な状況。 私は、即座に虫達が何処から侵入しているのかを確認した。 虫達は、天井裏の板を器用に外し、その隙間から這い出てくる。 恐らく、家の僅かな空間を突き進み、ここに辿り着いたのだろう。 そう……やはり、あれは幻覚などではなく……現実だったのだ…。 余りにおぞましい現実を目の前にして、私の歯がカチカチと音を鳴らす。 そんな中、虫の大群が近付いてくる。 (どうしよう……どうしたらいいの!???) 私は近付いてくる虫達を見詰めながら、恐怖で固まっていた。 体も動かないのは勿論だが、何より恐怖で頭の中が真っ白になる。 私の中を渦巻く、恐怖による混乱と疲弊する精神。 (殺される……私はきっと殺される…。) そんな強迫観念が、私の意識の内に絡み付く。
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