棲み処。

5/7
前へ
/16ページ
次へ
予想も出来ないジワジワと迫りくる恐怖。 だが、その直後だった。 不意に、虫達が前進を止め立ち止まる。 (何で……止まったの……??) 何が起こったのか分からず、虚ろな視線を虫達を見続ける私。 しかし、そんな時だった――。 ガチャガチャ――。 ドアノブが回る音が、突如として響く。 (な……んな……の?) 私は突然鳴り響いたドアノブの音が気になり、そちらに視線を移した。 足音はしなかった筈……。 ならば何故、ドアノブを回す音がしたのだろうか? 額から冷たい汗が流れ落ちる。 足音がしなかったと言う事は、つまり……。 私は即座に理解した。 ドアノブを動かしているのは、人ではない何かだと…。 ギギギギギギ…。 ギィィィイイイ…………。 ゆっくりが開かれる。 そして、その直後、ボトボトボト――! そんな小さな塊が床に、ぶつかる様な音が鳴り響く。 それが何かは、明るい部屋が故に即座に理解できた。 首をもたげ這いずりながら近付いてくる、細長い物体。 「う……嘘……!? 何で、何で……!??」 私は、それが何であるかを良く知っていた。 何匹もの這いずるモノ。 それは……言うまでもなく、蛇。 虫達を引き連れて、種類も形状も異なる様々な蛇が私の元へと近付いてきたのである。 「ひぃぃぃぃぃ――!! 来るな! 来るなぁぁぁぁぁ!!」 私は恐怖の余り手当たり次第、手元にあるモノを蛇に向けて投げ付けた。 枕も、布団も手で掴めるモノを全て。 緑色や茶色やらシマシマのやら、大小様々な蛇の群れ。 恐らくは、その中に毒を持つモノもいるのかも知れない。 そんな恐怖が私の中に焦りを加速させる。 私はその恐怖から逃れたかった。 だからこその懸命なる思いと行動。 それが実るかも知れない。 私の何処かに、そんな僅かな期待感があった。 そう、この状況から助かるかも知れないとゆう淡い期待感が…。 しかし…。 布団や枕をぶつけられて尚、蛇や虫達はそれを押し退けて、私へと近付いてくる。 そして、私と僅か五十センチの距離に近付いた直後…。 蛇や虫達は進軍を止めた。 (何………?) 震える唇。 カチカチと音を鳴らす、私の歯…。 何故、虫や蛇が足を止めたのだろうか? 理由は定かではない。 しかし……。 ただ一つだけ、ハッキリしている事がある。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加