這いずる音。

2/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
私の名は早川要【はやかわ・かなめ】。 今年で、27歳になったばかりの何処にでもいる都会生まれの平凡な女である。 仕事は会社事務職をコツコツとこなすOL職務。 そんな私が、この一軒家に住む事になったのはそれなりの理由があった。 まぁ、理由といっても単に騒がしい都会で家族と暮らす事に、少し疲れていたのでちょっと都会を離れて独り暮らしを満喫してみたい。 そんな良くある理由だった。 そして、私は何年もの間、ネット等で会社に通うにも便利な格安住宅を探していたのだが、それは一週間前に突如として見つかったのである。 ――格安家屋売ります、【販売価格20万円】―― ――ご興味のある方は電話番号×××-○○○○-××××番にご連絡ください―― そんな記載の一文。 (嘘でしょ!? 何でこんな価格で売ってるの??) だが、そんな中で当然、私の脳裏を過ったのは格安たる事情と言うヤツである。 そう考えるのは当然だった。 こんな上手い話が早々、ある筈がない。 安いなら安いなりの理由が、必ずある筈なのだ。 それとはつまり、訳ありと言うヤツである。 私は様々な事を考え、電話をする前に調べてみた。 最初に考えたのは、立地条件。 馬鹿みたいに都心から離れているとか、土地的に人が住むのに適していない等の事である。 具体的には、水が有害だとか何かしらの有害な処理場跡地とか、そういったものだ。 しかし、私が調べる限りでは、そういった事実は確認される事はなく…。 また、そうなると次に思いつくのは、かつて墓所や火葬場だったとか殺人事件や、この家屋で死んだ人がいるとか、そう言った話であった。 勿論、幾ら格安でも、そんなのを購入するのは論外。 私が求めているのは、スリルではないのだから当然である。 だが、意外な事に私が幾ら調べても、そんな事実は一切出てこなかったのだ。 ならば一体、何故こんな値段で売り出しているのだろうか? 謎は深まるばかりだった。 しかし、そんな好奇心や警戒心は私の欲求を上回るものではなく結局、こんな格安物件、先に買われたら後悔しても後悔したりないとの思いが先立ち私は、気がつけば記載された番号に電話をかけていたのである。 そして私は思いもかけない形で、念願の静かに暮らせるマイホームを手に入れたのだった。 しかし…。 引っ越して直ぐ、私はマイホームを購入した事を後悔する事となる。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!