這いずる音。

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何故か? 理由は色々ある。 いや、違う…。 直ぐに、そう思った訳ではない。 徐々に徐々にと、私は後悔する事になったのである。 身の毛のよだつ体験と共に…。 そう…。 あれが全ての予兆だったのだろう。 始まりは、キッチンでゴキブリを発見した事だった。 あの黒い虫だ。 最初、私は都会であろうと田舎であろうとゴキブリは居るのか…。 そんな感覚でゴキブリを見ていた。 別に珍しい事ではない。 そう…そんなモノは見慣れている。 それ故に私は、特に慌てる事もなくゴキブリを殺虫剤で退治した。 何匹いようと所詮、ゴキブリは人に危害を加えてくる類いの昆虫ではない。 後は、慣れの問題…。 だが…。 そんな私の楽観的な考えは、その後、見事に打ち砕かれる事になった。 その夜――。 カサカサカサ……。 カサカサカサカサ…。 カサカサカサカサカサカサ……。 カサカサカサカサカサ…カサカサカサカサ…カサカサカサ…。 (う……ん? 何これ……超うるさいんですけど?? 何なのよ…また、ゴキブリでも出たの??) 耳元に反響する、不快なる雑音。 私は余り不快さに苛立ち、目を覚ました。 そして、暗闇の中で体を起こそうと右手を着いた、その直後…。 グチャッ――。 何かしら硬いモノを潰した感覚が、右手に伝わる。 (えっ……? 一体何を・・・・?) 小さなアイス用のコーンにも似た何かを、潰す様な感覚…。 私はまだハッキリとしない意識の中で、それが何であるかを考えた。 だが、思い返す限りでは、ベッドの上に潰れる様なモノを置いた覚えなどない。 (私は一体、何を潰したの……?) そんな疑問だけが、私の頭の中を駆け巡る。 しかし、暗闇故にそれを確かめるには電気をつけ、部屋を明るくするしかない。 部屋全体を明るくするには、壁側のスイッチを押すしかないのだが、それはここからではやや遠かった。 ――となると、近くにあるのは電気スタンドを点けて明るくするしかないのだが……。 ――果たして確認するべきか?―― 私は不意に、そんな思いに駆られた。 眠いから…。 恐らく、それもあるが何が確認するのを迷わせる様な何が、私の中に生じたのである。 だが、私はそれを単なる気の迷いであると考え、気にする事を止めた。 何故なら原因を解決しないと、落ち着いて眠れそうにないと思ったからである。 そして、何気なく私は電気スタンドのスイッチを入れた、その直後――。
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