棲み処。

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・・・・・・・・・・・。 「・・・・・えっ……? 朝……なの?」 窓から射す光。 目元を照らす、その日射しにより私は目を覚ます。 どうやら知らない内に、私は眠っていたらしい。 (そうか……夢だったんだ。 そうに違いない……。) そう……考えてみれば、あんな事ある訳がないのだ。 部屋中に群がる虫の大群。 部屋を反響する私の悲鳴。 普通に考えて、あり得ない話だ。 映画じゃあるまいし、人に害を成す虫の大群など…。 そう……その証拠に、室内には虫の姿が一匹も………。 私は室内を見渡した。 確かに、虫は一匹もいない…。 だが…。 「えっ……? 夢なのに何で……!?」 破損して、床に投げ出されている電気スタンドと……ベッドに残された薄黄緑色のシミ…。 そして、右掌にこびりついた……。 「ひっ……!??」 私の体を寒気が襲う。 これは気温による寒気では、決してない。 あの……おぞましい体験が不意に甦ったが故の寒気。 これは、あの体験が現実だと認識してしまったが故の……恐怖から成る寒気であった。 (あれは……夢じゃなかったの……?) 私は呆然としながら、床を見詰め続ける。 壊れた電気スタンドと、その破片が散らばる……忌まわしき床を……。 ―――――― 「はい、お願いします。 時間無いんです、可能な限り早急にお願いします!!」 私は、そう言い終え通話を終えた。 (お願いだから早く、早く来て!) スマホを握り締めながら私は、焦点が定まらないまま周囲を見据える。 今、電話した先は害虫駆除の業者だ。 引っ越しの為、取った有給休暇の時間を、こんな形で浪費するのは癪だが今のままでは安心して、この家に住めないのだから仕方がない。 何しろ家屋自体は、多少の古さはあるが作り自体は上等な部類に属するのだ。 こんな家を20万とゆう破格の値段で購入できたのだから、そう簡単に手放せる訳がない。 そう…だからこそ、私は安心を手にしたかったのである。 家の周囲に住み着く害虫さえ退治すれば、きっと問題は解決するだろう。 きっと…。 私は、そんな希望にすがりながら業者が来るのをひたすらに待った。 そんな中、業者が来たのは午後一時過ぎ。 電話してより、約三時間後の事だった。 そして、業者の人達は作業に移ってくれたのだが…。 作業終了後、彼らから意外な言葉が返ってくる。
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