真夜中の初詣

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真夜中の初詣

 友達と夜中に初詣に行くことになった。  近くのコンビニで待ち合わせ、五人ばかりでぞろぞろと神社を目指す。  田舎町だから、いつもなら、こんな時間にうろつく集団などいないのだろうけれど、正月早々の夜中ともなれば、似たような考えの人達がそこそこいるらしい。  神社が近づくにつれて周りに人が増えていく。だが、何だか雰囲気が妙だ。  夜中とはいえ、初詣に行くのだから、和やかな話し声などが聞こえてきてもよさそうなものなのに、喋っているのは俺達のグループだけで、他はみんな無言で歩いている。  寒さで沈黙しがちなのか。あるいは、やはり初詣とはいえ夜中だし、些細な話し声も遠慮しようという配慮か。  周りが静かだからなんとなくこちらも自粛し、口を閉ざす。  暗闇の中、大勢の足音だけが前進する。それが一斉に右へ向かった。  いつの間にか神社手前の四つ辻まで歩いていたらしい。だが変だ。神社は真っすぐ行った先にあるのだ。どうしてここで右折するのだろう。  人が多いから迂回路でも通らなければならないのか? いや、多いといってもそこまでの人数じゃない。充分正面から入れるだろう。  もしや、周りは初詣に行く人ではないのではないか。たとえば夜中に出発するバスツアーなどの客とかで、目的地が違うのかもしれない。  ふとそんな考えが沸き、俺は友達を引き留めた。 「おい。神社は真っすぐだぞ」  その一言でみんなも足を止める。だが人数が足りない。 「あれ? ◯△は?」 「あの人達に紛れて行っちゃった?」 「おーい! ◯△!」  みなで呼ぶが返事がない。その状況に妙な焦りを感じ、去って行く人の群れを追いかけようとしたが、誰の足も動かなかった。  声を出すこともできなくなった俺達の視界から、凄い勢いで人だかりが遠くなる。それが、あんな所に曲がりが戸があっただろうかという位置で左に折れ、それっきり見えなくなった。  人の群れが消えると同時に自由が戻り、すぐに後を追いかけたが、さっきは確かに見えた曲がり角がどこにもなく、人の群れも見つかることはなかった。…一緒に消えて行った友達も。  直後に警察に届け、ありのままを話したが、信じてはもらえなかった。それでも友達は見つからず、ご家族の方から捜索願が出て、改めてその時の話を聞かれた。その時にもありのままを話したが、全員で嘘をついているのではと疑われただけで、
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