メガネと僕

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好きになったあの子が、知らない男と幸せそうに歩いていた。 その日から僕はメガネをはずした。 見たくないものは、見えないようにすればいいのだ。 ** 「高木さんって隣のクラスの遠藤と付き合ってるみたいだよな」 昼休み、何気ない様子で山田はパンを齧りながら言った。僕が知る我が高の全てのゴシップネタは山田から聞かされるものだ。将来、芸能記者にでもなればいいと思ってる。 「そうなんだ」 ただそれだけ、答えた。 「知らないの?小山と高木さんって仲良くなかったっけ?」 確かに仲が良い、と思ってた。 僕の一方的な片思いを心の奥底に押し込みながら、数人のグループでカラオケに行ったり、ボーリングに行ったりしていた。放課後二人でカフェに行ったことだってある。あくまで友だちとしてだ。 いつも彼女は僕の話に笑顔を向けてくれるから、気があるんじゃないかって思ってた。全く、思い上がりもいいところだ。 だから僕は山田の質問にも「普通だよ」とだけ答えた。 「そういえば、何で最近メガネしてないの?コンタクト?」 「なんとなく、目が疲れちゃって」 高木が僕の知らない遠藤とかいう男と、幸せそうに登校している姿をよく見かけるようになってから僕はメガネをはずした。 胸のきりきりする痛みが少しでも和らげばいいと思った。 逃げているわけではない。見えないことを選択しているだけだから、能動的な行動だ。
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