1人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日の放課後、下校途中に正門の前で突然後ろから僕の名を呼ぶ声がした。
「やまちゃん!」
振り返ると、高木だった。
彼女は僕のことを「やまちゃん」と呼ぶ。同じクラスに小山がもう一人いるから、それと区別してるんだろうと思ってる。
「やまちゃん、元気?」
いつもと変わりない元気な様子に何故だか苛立ちを感じた。
「ふつー」
無愛想に答える僕。
「あのさ、突然だけど、山田っちって付き合ってる人とかいるの?」
突然の質問にはてなマークが頭の中に飛び交う。山田は未だかつて恋人がいないと自負するくらいだから、いないはずだ。
「いないんじゃない」
「そっか。あ、これ山田っちには内緒ね」
人差し指を唇につけながら意味ありげな笑顔を向ける。
「ねー、そういえばなんで最近メガネしてないの?コンタクト?」
「目が疲れたから」
同じ質問を何度もされると、条件反射のように答えがすんなりと出てくる。
「メガネしてない方がいいね」
にんまりと高木は笑う。
高木の笑顔の先に遠藤がこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。遠藤がこちらに向かえば向かうだけ、僕の苛立ちは大きくなる。
「じゃ、また」
そっけなく、そう言い残して僕はその場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!