――10章 あなたの声が聞きたくて

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◇ ◇――湊  どんな風に答えようかと思い悩んでいた時だった。視線を感じて顔を上げると廊下の角にさっと身をひるがえした人物がいた。 ・・・環菜だ。  まさかとは思ったが、分かりやすすぎンだよ。  廊下の角にへばりついてドキドキしている姿が思い浮かび、思わず顔がゆるんだ。それを見ていた彼女は不思議そうな表情を見せた。 「あ、え・・・っと。」  どんな風に伝えれば環菜に伝わるのだろうか。俺はそればっかりを考えていた。 「今、すげー大切にしたい人がいる。そいつ、自分に自身がない奴でさ・・・俺の側にいていいのかって常に考えてるような奴でさ・・・、このことを俺以外の人から耳に入るようなことがあったら不安にさせちまうと思うんだ・・・。」
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